日本政府は、「2035年からGD車の製造禁止。2050年までにカーボンニュートラルでGDをゼロ」方針を正式に打ち出した。「地球温暖化防止」の流れの中で、各方面から支持されている。しかしGD車を廃止し、すべてEV車にする事の社会的影響が余りにも大きいので問題点を列記する。

 1.自動車業界は、現在年間400万台製造しているGD車がなくなれば、その生産設備・関連従業員550万人をどうするか。ただ、自動車会社は資金も豊富で、人材もそろっているから、15年も先の話ならその間にEV車製造などへ変換していく可能性は大であろう。

 2.消費者はどうか。35年以降、新車がEV車になればEV車を購入する。EV車への転換が明確な時、35年の1、2年前にGD車を買うだろうか。中古車価値がゼロになる可能性があるGD車を買う人はいない。GD車からEV車への転換は35年より一層早まる事になる。

 3.悲惨なのは中古車販売業者である。現在の中古車は99%GD車であるから、GD車は売れなくなる一方、35年以降数年間はEV車の中古車は出て来ない。

 4.石油業界は、GD需要の激減に対応しなければならない。元売りは、資金が豊富な上に優秀な人材が揃っているので、脱石油への転換に成功するだろう。GDが無くなり、灯油・A重油だけが残ると、原油を輸入して2品だけ精製する事が出来るのか。無くなるGDの精製コストを2品に乗せ値上げすれば、2品を使っている農業・工業・漁業等の国際競争力は大幅に低下する。



 5.ガソリンスタンド(GS)はどうか。今、GSは全国に約3万軒あるが、その75%は1軒~3軒を経営している小さな商店主である。将来販売する商品の需要が激減するのなら、経営者はGS経営を見限って、他のビジネスに転化する。3万軒の大半は、40~50年前に立てられた設備で、GSは50年経ったら地下のタンクを掘り返し、配管等も新品に変えねばならない。費用は、最低2~3000万円はする。将来性のない事業にそんな多額の投資をするか。50年経ったGSは、漏洩の危険性を感じたら、すぐ閉鎖するだろう。

 6.現在8000万台登録されているGD車のユーザーの中で、当面EV車へ切り替えられない人は、GD車を使用する限りGSで燃料の供給を受けねばならないが、GSが閉鎖されると、給油する場所を求めて大混乱が起きる。GD車の位置とGSの位置がマッチしないと大変な事になる。GD車の減少とGSネットワークの減少をマッチングさせる行政指導が地域毎にも全国的にも必要になるが、GSが独立した個人経営であり、極めて困難な作業となろう。

 7.既存のGSがなくなると、困るのは、灯油の消費者である。暖房・厨房用に灯油を利用している消費者が多数あり、北国では自分の家に60L~90Lのタンクに灯油を入れて暖房・厨房に使っている。灯油の供給のGSの閉鎖は死活問題である。需要は冬場に集中するので、LPG業者や大手スーパーによる灯油配達が、個々の消費者へ可能なのか。消費者に灯油の使用を断念させ、電気や都市ガスへの転換を強要出来るのか。

 8.更に給油所の激減とGD需要の激減で、これらの輸送に従事していたタンクローリー、タンカー、石油の第1次基地・2次基地に関連する業界は大打撃を受ける。

 石油業界関連業者並びに中古自動車販売業者などの撤退に伴う経済的大損失と、新しい電池・電力供給のインフラ投資と消費者のEV車購入に対する新規投資の双方を考慮した場合、政府の方針は、理念は別として、正しいものなのだろうか。少なくとも上記問題点に対する解決策を明示した上で、公に提案されるべきものではなかろうか。




※GD=ガソリン・ディーゼル車 EV=電気自動車の略


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