「服従と忖度」
強権化する菅新内閣

今だけ、金だけ、自分だけ、の一部の人々のためではなく、今度は「国民のためにはたらく」?

                  立憲民主党副代表 森 ゆうこ
(参議院予算委員会筆頭理事)

                    

森ゆうこ氏

               

「この質問は、菅官房長官ではなく、安倍総理にしてください!」「この質問も安倍総理でいいですね」「とにかく官房長官には質問しないでください!」。

 今年の通常国会、私が参議院予算委員会で質問する際、質問取りに来た内閣総務官室の職員達は、菅内閣官房長官(当時)の国会答弁を回避しようと必死だった。その姿は滑稽にすら見えるほどであった。こんなことは16年間の議員生活で経験したことがない。「どれだけ菅さんは官僚に恐れられているんだ……」と本当に驚くと共に、官邸ポリスと呼ばれている警察官僚(主に公安)出身の杉田内閣官房副長官に指示して「内閣人事局」を最大限に活用し、従わない者は問答無用で排除していく恐怖政治が行われ、「服従と忖度」が霞ヶ関に蔓延しているという情報の信憑性が私の中で高まった瞬間だった。

 現在大きな問題となっている「日本学術会議任命拒否問題」を甘く見てはいけない。菅総理も安倍前総理と同様に、あるいはそれ以上に、「権力は抑制的に行使するべき」であるとしてきた自由民主党歴代総理の「権力の作法」を躊躇なくかなぐり捨てた、あるいは全くそのような意識さえないように見える。「知識をひけらかし優雅な生活をしている学者達がやられていい気味だ」とたかを括っていると、権力は市井の人々の自由にまで手を伸ばして来ることは、過去の歴史が証明しているのではないだろうか。

 アベノミクスは失敗だった。異次元の金融緩和で「温室」を作り、その「温室」の中で新しい産業を育み、時代に合わなくなった企業は体質を改善したり退出したりしやすくするはずだったが、7年経ってもデフレ脱却はできず、滴り落ちて来るはずの恩恵は、地域や庶民にとうとう辿り着かなかった。今や国内株式市場の最大の株主は公的機関である日本銀行とGPIF(年金資金を運用する機関)である。実態経済を反映していない日経平均株価は、官製相場で、つまり国民の税金を使って、お金持ちをよりお金持ちにしただけだった。確実に格差は拡大した。昨年、非正規労働者は前の年より45万人増えて2165万人で、働く人の38.3%。3人に1人が非正規労働者となり、コロナ不況で真っ先に影響を受けた。昨年の消費税増税によって、特に地域経済は打撃を受けたところに新型コロナウイルス感染症が発生した。多くの人々が命と暮らしの不安を抱え、企業は苦境に追い込まれている。このままで年が越せるのか、夏に続いて冬のボーナスが出なければ住宅ローン返済に行き詰まる、学費納付や奨学金返済が出来ない等、切実な声が日増しに多くなっている。

 政治は生活である。新しい総理大臣が真っ先に着手する政策は、国民の皆さんの命と暮らし、地域経済を守るための具体策だと思っていた。デジタル庁やハンコ廃止を全否定しているわけではないのだが。

 菅新政権が誕生してから40日。明日から漸く臨時国会が開会される。新しい総理が誕生したにも関わらず、国会で所信表明をせず、質疑も行わず、新内閣の外交方針の一端を私たちが知ったのは、菅総理が初外遊に出かけた際の内外記者会見であった。安倍総理7年8ヶ月の長期政権において繰り返された虚偽答弁、公文書の隠ぺいと改ざん、廃棄によって、国民の代表が行政を厳しくチェックするという国会の行政監視機能は、無力化されてきた。以前はすぐに行政文書や正確な情報が霞ヶ関からもたらされたものだ。私たちの調査活動は法律に基づく国政調査権発動の元になるものだから当たり前のことだった。今は、当然提出すべき行政文書をピンポイントで要求しても出し渋る。そもそも提出された文書が改ざんされていない「真性」なものであるかどうかを確認するために時間と労力と神経をすり減らす、という異常な事態を今度こそ打開しなければならない。

 自民党に代わりうる、政権を担いうる、新しい立憲民主党が誕生した。過去の苦い経験を教訓にして、今度こそ期待に応えたいと決意を新たにしている。

(11月25日臨時国会前夜記)

 森ゆうこ議員の名前を知ったのはその鋭い質問が印象に残ったからで、爾来、彼女が質問に立つと委員会室はシーンと緊張の波が漂うのを感じる。野党でありながらお伺いを立てるような、まるで、政権に主張の場を与えるように質問する議員もいるが、森ゆうこ氏は政府の無茶や横暴に毅然とした言葉を放つ。立憲民主党副党首としての今後のご活躍を期待します。(編集部)





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