多津衛民芸館

                        信州のロザリアン
                                   



吉川徹館長


 

『手が語る、多津衛民芸館』とは…

 東京から信州の浅間山の麓に居を構えて3年、四季の移ろう中で土に接する生活をしていると、命の母体である地球の包容力の大きさに感謝の日々です。その地球は今、自然環境の破壊が進み、温暖化により大型台風の被害など警告を発しています。その1つが世界的なパンデミックのコロナ禍です。連日のコロナ報道で家にこもる生活で感じた事は、これからの社会を維持するにはどうすれば良いのか、転換期の課題を与えられたと思いました。

 佐久市の望月にある多津衛民芸館で吉川徹館長の『民芸とは何か、小林多津衛と多津衛民芸館の願い』と題した講演会がありました。機械化された大量生産品よりも、職人さんや作家さんの手仕事の作品が好きなので、この民芸館に収蔵され展示される器や染色作品、版画などの展示や、近隣の作家さんたちの生活必需品の展示即売会など、地域との繋がりを大切にしているので、居心地の良い好きな場所です。

 ここには、小林多津衛さんが蒐集なさった民芸品が中心に展示されており、暮らしの中から社会を見つめるという理念のもと、衣食住の美しい物をたくさん見て、日常で使い、自分でも作ってみる事を提唱なさり、展示室、喫茶室、作業室というスタンスでの活動の場になっています。今回も講演会の休憩タイムに、ここの収集品の用と美を兼ね備えた江戸時代の蕎麦猪口でお茶をいただき、使う事により、器のぬくもりが手に伝わる喜びを味わい、大切に使いつつ、欠けても金継ぎで美の追加をする日本人の「もったいない精神』の素晴らしさと、用と美の体験ができました。

 使い捨てで経済をまわす大量生産と大量消費でのゴミ問題、マイクロプラスチックの海洋汚染、除草剤と農薬の食料汚染や、肉の消費によるアマゾンの森林の放牧地化、化石燃料でのCO2問題…欲望に満ちた新自由主義の破綻は、私たちの生きる生存権すら格差社会が拡大し、貧困層はこの世界の片隅に追いやられて、ますます棄民化されています。



多津衛民芸館の勉強会



『平和を維持するには…』

 世界で平和憲法を持つ国は日本とコスタリカの2国だそうです。コスタリカは自国が平和であるためには、周辺諸国も平和でなくてはと、紛争解決に乗り出して、平和を輸出することを理念としました。憲法で軍隊をなくし、軍事費を教育費に回して、民主主義とは誰もが教育を受けられ、安定した生活ができ、人権が保障され、弱者を支える社会保障が整備される事であると、小学校から選挙の大切さも含めて教育しているそうです。

 日本では、多津衛先生が1970年に提唱された『赤十字国家』論があり、憲法9条の戦争放棄の理念を、国際社会に貢献する方法として、軍事費を削って医療の乏しい地域で病気に苦しむ民衆や、自然災害や紛争地で被災した民衆に、医療従事者や医薬品で派遣援助をする社会貢献を続ければ、戦争の火種が降り注ぎそうな危険な状況に日本が巻き込まれそうになった時に、貢献した国々からの友情で戦争回避の可能性が出てくる、という理念だそうです。

 平和だからこそ、労働の喜びと、ささやかな生活を彩る、使う喜びを感じる衣服や器や木工品、絵画や音楽という心身の栄養素が幸福を充実させるのです。

 それには、食の基盤である農村の充実が大切ですし、生活に必要な手の仕事である物作りの職人さんたちの作品への支援の充実も見直されるべきです。手を使ってモノを作れるのは人間の特権であり、幸せの原点で、多津衛民芸館は支え合う共存の拠点としての活動を、吉川館長さんとスタッフの皆さん、作家さん、来訪者の皆さんと共に、ゆったりと営まれており、今年で25年目を迎えられました。

 大都会の一極集中から地方分散への移行は必須で、自然を忘れた社会は孤独になりつつあり、世代を超えたコミュニケーションの輪の中で、互いに助け合いたいと切に感じた1日でした。



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