出来た

東京都江東区 藤村 清彦



親から貰った私の盛岡の家には、
2階に上がってすぐの廊下に沿うて
広い物干場がある。


 夜空が間近く見えて干し終わった
後も長居することがあり、句が生まれることもある。


 以下は帰京後11月の
某月例句会にて。


 会員20人60句の講師手書きの
プリントを前に点盛りが進むが、
各人6点持っているのに私の句には
一向に入らない。最後に講師も点を
投じる段になりようやく
唯一の点が入った。


 「夜干して暫くゐたり天の川」


 最後に総評があってすべての作者が明かされ、秀句の発表があり、
特選3句に先んじてこれが
「今日の一句」に選ばれた。


 ここでよせばよいのに私が結果と
して余計なことを言った。
「先生、ヨルホシテでなくヨボシシテと
投句したはずですが……」。
先生は「うむうむ」と座の衆に意見を
言わせる。
「この句で天の川の季語は動かないから夜干しでは季重なりになる」
と大先輩の発言あり。
「作者は季重なりでは確信犯的な使い手だ」の擁護発言?
も出るうち時間切れで終った。


 帰宅後に原簿をチェックしてみたら、自分でも季語を天の川としていた。
「天の川」はあまりにも大きな主季語
で、夏の季語「夜濯ぎ」から派生した
「ヨボシ」は、季重なり感はもとより
季違いを防ぐためにも「ヨルホシテ」が妥当という結論に達し、
先生の深慮をここで理解した。
冷や汗が出る思いだ。


 まだある。天の川だから「夜」もいはずもがなだった。

投句前の推敲が全く足りない。

 「物干してしばらくゐたり天の川」

 ここに至って、出来た。







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