水 平 線

東京都江東区  髙橋 絹代






日本海の水平線

水平線といえば「今も沖に未来あり」の

有名な中村草田男の句を思い出す。

しかし、生まれ育った日本海側の冬は

海も空も暗く、とても未来などあるように

思えない。この水平線の果てには暗い

イメージのロシアと北朝鮮があるだけである。




殊に北朝鮮の誘拐事件は、この北陸の

浜辺だと思うと、海が荒れれば荒れるほど、

私の胸にも暗い髙波が押し寄せる。

この現代に 人攫 (ひとさら)いがあったと

は恐ろしい事件だ。



 今は差別語で裏日本とは言わなくなったが、

やはり風土的には表と裏の差は大きい。



 「白い巨船きたれり春とおからじ」

(大野林火)は、太平洋の青い何処までも

続く海の水平線である。数年前、横浜に

「クイーンエリザベス号」が寄港したが、

その時はさぞかし華やかな水平線となり、

それからも先へ先へと羨ましい夢の水平線が

続いた事だろう。



 これに反して決して忘れてはいけない

悲しい水平線もある。尊い青春の命を

お国のためにと捧げた兵士、特に知覧の、

行って帰らぬ水平線は、深い慟哭の波音と

なっているに違いない。



 黒船来航によって開港された下田は、

日本の夜明けを今日に導いた歴史上の町で

ある。寝姿山の山頂から日夜、黒船の

襲来を見張ったという。その水平線から

黒船が現れた時はどんなにか驚き大騒ぎに

なった事だろう。岬の灯台に登ると、

何処までも青い海の水平線が丸く見える。

思わず「行って見たいな他所の国」

と口ずさみ、胸いっぱいに潮風を吸い込んだ。

島国である日本の水平線をぐるりと

探検しながら、豪華な船旅も悪くはない。

もう儚い夢となったが

今も尚、捨てきれないでいる。




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