ホーム転落防止

 どんな介助が必要?

ホーム転落防止

 どんな介助が必要?

松原市在住  古川 一夫




安全対策は出されたが…



 今年(2017年)5月のある日の夕方

Aさんとばったり会い、短時間だが話す

機会を得た。Aさんは全盲の視覚障がい者で、

私は約10年前、通勤時に何度か電車の

乗降時にサポートしたことがあり、

その後も年に1度くらい街角で会うと

歩きながら数分間話すことがある。

16年12月に安全対策が出されてから、

どのように変わったのかをAさんに

尋ねてみた。



 安全対策とは国交省と

鉄道会社が出したもので

①1日に10万人以上が利用する駅は

原則として、ホームドアを2020年度

までに設置する。

②ホームドアがない駅で、一人で行動する

視覚障がい者を見かけた場合、駅員は

原則として構内を誘導し、到着する列車を

待って乗車を介助する、という内容である。




 これを受けて、「ホームドア設置ゼロ」と

いう全国で最も対策が遅れている関西私鉄の

うち阪急、阪神、近鉄は設置を表明する。

とは言っても、主要駅の一部ホームに過ぎず、

安全対策の基準を満たしていない。

だがマスコミはホームドア設置キャンペーン

をぴたりとやめてしまった。



アンケート対象は視覚障がい者300人毎日新聞と社会福祉法人・日本盲人会連合が共同実施



中途半端な善意は危険




 私の問いにAさんは「介助してくれる方

の中には、途中で“はい、ここまで”

と言って立ち去る人がいるがこれは困る」

と答えた。私鉄から地下鉄に乗り換えるの

だが、介助者は私鉄の出口付近で

声をかけ、

地下鉄入口付近まで来ると進む方向が

違うため、そこで“置き去り”にして

立ち去るのである。助けてもらっている

立場のAさんは「いつも利用する改札口

まで連れて行って」とは口に出せない。




 介助した方は「いいことをした」

と思っているかもしれないが、中途半端な

善意はかえって危険を招く。

視覚障がい者は起点からの歩数を数えて

現在場所を把握しながら、決まったルートを

進む。このルートを外れた時は、

わかる場所(いつも利用する改札口や

乗車するドア等)まで案内しないと、

視覚障がい者は自分のいる場所が

わからなくなってしまう。



能力向上も大事な要素



 Aさんは「介助を申し出る駅員さんに

“慣れているから”

と断っても聞き入れてくれない。

一律にマニュアル通り行うというのは困る」

とも言う。Aさんはわがままな性格ではない

し、会話が苦手なのでもない。

前述した安全対策の②については

「介助を断られた場合でも、

乗車するまで見守り続ける」

という但し書きがあるのだが、

これが生かされていないようだ。



 視覚障がい者全国アンケート調査

(16年12月実施)で、「転落を防ぐ効果的

な対策は?」との質問への回答(複数回答可)

では、「第三者の声かけ普及」よりも

「ホームドア設置」の方が若干多い。

また「自身の注意力向上」もかなりある。

この回答は「一人で電車利用ができる能力を

備えたい」と考える視覚障がい者は

少数派ではないことを示している。




 ホーム転落防止のため介助は非常に

大切なことだが、その反面、介助を受ける

ことに慣れ切ってしまうと一人で歩行する

能力が低下するという矛盾が生じる。

これを解決する妙案は思い浮かばない。

障がい者一人一人の思いは様々なので、

その思いに寄り添うような介助が必要である、

と一般論を述べることしか私にはできない。




 ホーム転落事故は通い慣れたいつもの

駅の構内で、何らかの理由で方角が

わからなくなる等の原因で起こる。

見知らぬ視覚障がい者に「手伝いましょうか」

と声をかけるのは勇気がいる。

事故防止のために簡単で誰にでもできる

方法は、危険だと判断すればすぐに

抱きかかえられるように見守りながら、

黙って後からついて歩くことである。



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